LINE WITH

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LINEを通じた「誘わずに誘える」コンテンツマッチングサービス

Industry

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Team leader
Team leader

Headquarters

Headquarters

Figma、Notion、Google forms
Figma、Notion、Google forms

Founded

Founded

6months
6months

Company size

Company size

UX/UI Design、Service Design、Strategy Design
UX/UI Design、Service Design、Strategy Design

-Overview-

01|Objective

メッセンジャーアプリLINEとの「親しい人と繋がる理想のコミュニケーションサービス」新規開発プロジェク。ト本プロジェクトでは若者のLINE上でのコミュニケーション体験を向上させ、より気軽に友人との交流を楽しめる環境を作る。

02|Role & Deliverables

5名のチームでチームリーダーとしてデザインリサーチ、新規サービス開発をリード。 問題の定義からビジネスモデル設計、最終的なプレゼンテーション、コンセプトムービーの提供。

03|Challenge

オンライン上では相手からどう思われるか「杞憂」してしまい、友人を「誘う」という行為に心理的障壁が発生する。その心理的障壁を構造的に取り除けるサービスを開発し、日常的な交流をより活発にすることを目指しています。

04|Outcome

LINE主催のコンテストで最優秀賞を獲得し、優勝。 人ではなく「コンテンツでマッチング」させることで「誘わずに誘える」構造を設計し、ユーザーのコミュニケーションにおける心理的障壁を取り除き、日常に幸せなシーンを増やすことができるサービスを完成させました。 また、安定的かつ、稼げるビジネスモデルの設計にも留意し、この点も非常に高く評価されました。

About Project

「親しい人と繋がる理想のコミュニケーションサービス」

本プロジェクトは、このような課題認識に基づき、メッセンジャーアプリLINEとの連携を視野に入れた「親しい人と繋がる理想のコミュニケーションサービス」の新規開発を目指しました。


Background & Challenge

Z世代のLINE利用量の減少

コミュニケーションインフラとして日本社会に深く浸透しているLINE。

今や日常生活に欠かせないほど深く浸透していますが、近年、Z世代を中心に、より手軽で視覚的なコミュニケーションが可能なSNSの利用が拡大し、LINEの利用状況に変化が見られました。

特に、InstagramなどのSNSが連絡手段として台頭し、LINEでの会話量が減少傾向にあり、日常的なメッセージのやり取りや連絡先の交換が他のプラットフォームに移行する傾向は、LINEが若年層のコミュニケーションニーズの変化に十分に対応できていない可能性を示唆していました。

このような状況下で、LINEが今後もその価値を高め、ユーザーエンゲージメントを維持・向上させていくためには、既存のコミュニケーション体験を再考し、新たな価値を提供する必要がありました。


Process


Researcch

「親しさ」の定義の曖昧さと本質的な欲求の探求

プロジェクト初期段階において、私たちはまず「親しい」とは何か、「理想のコミュニケーション」とはどのようなものかを探るため、Z世代へのインタビューを実施しました。しかし、インタビューを通じて明らかになったのは、「親しさ」や「理想のコミュニケーション」の定義は人によって大きく異なり、状況や関係性によって常に変化する、極めて曖昧な概念であるということでした。

ある人にとっての親しい人は、「なんでも話せる関係性」であり、長年の時間を共有してきた人でした。一方、出会って間もないながらも、強烈な共感を覚える相手を親しいと感じる人もいました。理想のコミュニケーションについても同様で、頻繁な連絡を取り合い、常に繋がっている状態を理想とする人もいれば、必要な時だけ連絡を取り、適度な距離感を保つことを望む人もいました。

チームで議論した結果、「親しさ」という捉えどころのない概念を深掘りするよりも、ユーザーにとっての「親しさ」は流動的で主観的なものであり、サービスとして特定の「親しさ」を規定することは、かえってユーザー体験を阻害する可能性があるという結論に至りました。

そこで、より普遍的で、誰もが共感できるニーズに立ち返ることをチームに提案し、合意を得ました。

インタビューを重ねる中で、ユーザーが人間関係において共通して求めているのは、「今日楽しかったな」「また一緒にどこか行きたい」「一緒にご飯に行けて仲良くなれた」といった、

日々の生活における楽しい時間を積み重ねる

ということでした。ごくごくシンプルで当たり前の問いですが

LINEというある種インフラ的な側面を持つプロダクトのため、万人にとって普遍的なこの問いはとても適していると判断しました。

チームとして、「親しさ」という曖昧なゴールを目指すのではなく、「楽しい瞬間」や「共有体験」といった具体的な価値を提供することで、結果的にユーザー間の関係性が深まり、その個々人にとって心地よい最適な「親しさ」が自然と醸成されるようなアプローチこそが、本質的な解決策であると確信しました。

そこでインタビューの結果からEmpathy mapを用いて、対象ユーザーの悩みや思いを整理することにしました。

コミュニケーションにおける「杞憂」の構造分析

「幸せなシーンを共有したい」という普遍的な欲求がある一方で、それを実現するための具体的な行動、特に友人や知人を「誘う」という行為に対して、多くのユーザーが心理的な抵抗を感じていることが、インタビューを通じて明確になりました。

「誘って断られたら嫌だな」

「相手に迷惑かもしれない」

「共通の話題がなくて気まずくなるかもしれない」

といった具体的な懸念の声は、「杞憂」というキーワードで集約され、現代のオンラインコミュニケーションにおける特有の心理的障壁を示唆していました。

これらのユーザーの声から、単なる個々の不安として捉えるのではなく、より深く、構造的な問題として捉えることが重要だと結論付けました。

表面的な感情に対処するだけでは、根本的な解決には繋がらないからです。

ユーザーが「誘う」という行動を躊躇してしまう背景にある共通の心理構造を理解することで、サービスとしてどのようにその構造にアプローチし、心理的負担を軽減できるのかを検討する必要がありました。

そこで、チームと協力してこれらの懸念を分析し、杞憂してしまう構造的要因を以下の三つと特定しました。

・双方向性のコミュニケーション(相手の反応への意識)

・誘いが成立しない心配(拒否されることへの恐れ)

・楽しい時間を過ごせるかの懸念(期待外れになることへの不安)

という3つの主要な「杞憂してしまう構造的要因」を特定しました。

これらの要因は、ユーザーがオンライン上で積極的にコミュニケーションを取り、関係性を深めることを阻害する、根深い構造的課題であると認識しました。


杞憂しないための条件の導出

特定した3つの「杞憂してしまう構造的要因」に対し、チームでブレインストーミングを行い、それらを直接的に解消するのではなく、むしろ逆の方向からアプローチすることで、心理的な障壁を取り除くための条件を導き出しました。

この逆転の発想は、ネガティブな感情を直接的に打ち消すのではなく、その感情が生じる根本的な状況を変えることで、より自然に心理的負担を軽減することを目指した戦略的な判断でした。表面的な機能追加やメッセージングのテクニックに頼るのではなく、ユーザーが無理なく、そして意識することなく心理的な抵抗を感じなくなるような、サービス全体の仕組みを設計する必要があるとチームに説明し、方向性を共有しました。

具体的には、

「一方通行性(他者の反応を気にしない表現や発信)」

「良い意味での強制力(ある種のルールや共通認識による参加しやすさ)」

「ソフトの共有(コミュニケーションのきっかけとなる共通の話題や情報)」

というキーワードを設定し、これらの条件を満たすサービスコンセプトの検討を開始しました。


Ideate

コンテンツマッチングという新しいアプローチ

上記の仮説をもとに、その仮説を最も自然な形で実現できるサービスアイデアを具体化するためのアイディエーションを行いました。

私はそこでアイディエーションワークショップのリードを行いました。

留意した点は以下の点です。

  • 特定の機能ではなく、構造で解決する。(ユーザーの抱える課題がそもそも発生し得ないシステムを作ること。)

  • ワンフレーズでサービスを表すことができ、かつそのフレーズに新規制があること。

  • 実現可能性が高く、安定的な収益も見込めるもの。


ワークショップでは上記の観点からの投票制にし、最も票が集まったアイデアを採用しました。

私たちが導き出した解決策の中核となるのが「コンテンツマッチング」という新しいアプローチです。

これは、ユーザー自身の興味関心を示す「コンテンツ」(行きたい場所、見たいイベント、好きなアクティビティなど)を起点として、同じコンテンツに興味を持つ他のユーザーとマッチングするという仕組みです。

「人」ではなく「コンテンツ」をマッチングの主要な軸として据えたのは、

💡興味を持ったコンテンツでマッチングすれば、「誘わずに誘いが成立した状況」を作ることができる

からです。

コンテンツでマッチングすれば以下の構造を作り出すことができます。

・一方通行性:コンテンツへの興味を起点とした返信を前提としないアクション。

・いい意味での強制力:マッチングがお互い成立したという合意形成。「誘いが断られるかもしれない」という可能性は発生し得ません。

・ソフトの共有:マッチングのきっかけが共通の興味関心であるため、会話の開始時点から共通の話題が存在します。「何を話せば良いかわからない」「場が盛り上がらないのではないか」といった不安を抱える必要はありません。

行きたいレストランや、ポップアップイベント、美術館など、興味を持ったコンテンツを選択するだけで、ユーザーは特定の個人に対して直接的なアクションを起こす必要がなくなり、相手の評価を意識することを考える必要がなくなります。

そして、共通の興味を持つ相手とのマッチングは、相互の合意形成に基づいた、より自然で心理的負担の少ない繋がりを生み出し、「誘わずとも、自然と誰かと一緒に行動する」という状況を作り出すことができます。


MVP

今回はまずは「コンテンツマッチング」という価値仮説をとにかくスピディーに検証すべく、なるべく必要最低限の機能を備えたMVP(Minimum Viable Product)を簡易的に準備し、検証人数を増やすためにその他のリソースはリクルーティングに割きました。

そして同じサークルに所属する大学生29名を対象に実証実験を行いました。

結果としては非常にポジティブな結果が得られました。

これらの数値は、コンテンツマッチングを通じたコミュニケーション促進という本サービスのコアバリューが、ユーザーに受け入れられていることを示しました。

特に実際に遊びに行った人数は我々の想定(3割程度を想定)を大きく上回り、オンラインからオフラインへの行動変容を促すというサービスとして非常に意味のある可能性を発見できました。


Service

これまでのリサーチを含め、本格的にサービスの設計に入りました。

まず、サービス名はLINEを通じて"一緒"にいろいろな思い出を積み重ねていくと言う思いから、LINE WITHと言うサービス名にしました。

また、Z世代をペルソナとしたときに、既にペルソナに受け入れられているサービスフォーマットが良いと考え、多くの大学生が使用しているアプリをベースにアプリのデザインなどを考えました。

これまでの検証内容と結果をもとにアプリに必要な基本的な要素を以下の通り、絞り込み、UIの作成に取り組みました。

上図をもとにUI作成に入りました。

Google mapやInstagram、Tinderなどの対象ペルソナが普段から使い慣れているアプリの画面などを参考に直感的に使いやすいUIを作成しました。

検証でユーザーから要望の多かったMap機能とコンテンツ作成機能を追加しました。

これにより、単なるチャットアプリという側面の強かったLINEが情報を発信、検索できるSNSとしてサービス内に多くの情報が溜まっていくような仕組みを作り上げました。


Business model

「コンテンツ型広告」をビジネスモデルの中核に据えることを決定しました。

具体的な収益化の仕組みとしては、以下の3つを柱とします。

  1. コンテンツ優先表示型広告: マップ上に表示される各種コンテンツ(イベント情報、店舗情報など)において、広告主からの費用に応じて優先的に上位表示する仕組み。広告主はより多くのユーザーにリーチできるというメリットがあります。

  2. 成果報酬型広告: イベント主催者や店舗と連携し、LINE WITH上でのイベント告知やクーポンの配信などを可能にします。ユーザーがLINE WITHを通じてイベントに参加したり、店舗を利用したりした場合に、広告主から手数料を得るモデルです。

  3. プレミアム機能: ユーザーにより高度なマッチング機能(例:特定の属性のユーザーとのマッチング優先)、限定コンテンツの利用などを有料プランとして提供。


Research findings
非常に高いコンバージョンが見込める

一般的な広告は、消費者が本来見たいものの間に割り込んで入ってくるような形を取りますが、

LINE WITHでは「広告自体が見たいコンテンツ化する」という特徴を持ち、ユーザーが本当に求めている情報、例えば地域のイベント情報や店舗のおすすめなどを、広告という形で自然に、かつ魅力的に提供することで、ユーザーは情報を積極的に受け入れ、広告主は高いエンゲージメントと、実際の行動に繋がりやすい効果的な広告展開が可能になります。

MVPの結果が示す通りマッチングしたユーザーのうち、非常に高い割合が実際に遊びに行くと考えられるため、広告に対するコンバージョンが非常に高いことが予想されます。


Outcome

共感を呼ぶコンセプトムービーの制作

LINE WITHのコンセプトと、コンテンツを通じて気軽に繋がり、日常に小さな幸せが生まれるまでのユーザージャーニーを具体的にイメージしてもらうため、あえて、Z世代の日常におけるサービスの利用シーンを描いたCM風のコンセプトムービーを制作しました。

ムービーでは、ユーザーが自身の興味関心に基づき、行きたいイベントや気になる場所をLINE WITH上で発見する様子、そして同じコンテンツに興味を持つ他のユーザーとスムーズにマッチングし、実際に出かけて楽しむ様子を描写しました。「誘う」という行為に伴う心理的なハードルが、コンテンツを介することで自然と解消され、気軽なコミュニケーションや新しい出会いが生まれる瞬間を視覚的に表現することで、サービスの魅力を最大限に伝え、共感を呼び起こすことを目指しました。特に、広告がユーザーにとって価値ある情報として自然に受け入れられ、行動を促す可能性についても示唆しました。

LINE主催コンテスト最優秀賞の獲得

これらの徹底的なユーザー理解に基づいた革新的なコンセプト、実現可能性の高いサービス設計、そして持続可能なビジネスモデルが高く評価され、私がリーダーを務めるデザインチームが開発したLINE WITHは、LINE主催の新規サービスに関するコンテストにおいて、見事、最優秀賞を獲得しました。

審査員からは、

Z世代のコミュニケーションにおける潜在的なペインとニーズ対する深い洞察力

それを解決する斬新さとシンプルさを併せ持ったソリューション

現実的かつ高い収益性の見込めるビジネスモデルの構築

LINEとしての戦略設計との親和性

が評価されました。


Conclusion

LINE WITHは、「アイタイ」というシンプルな欲求に対し、従来のオンラインコミュニケーションが抱える課題を構造的に解決する新しいアプローチを提供します。コンテンツを介したマッチングにより、「杞憂」することなく、誰もが気軽に繋がり、共通の体験を通じて日常に小さな幸せを積み重ねていける世界を目指します。

私がリーダーとして牽引したこのプロジェクトを通じて、人々のコミュニケーションをより豊かにし、より良い人間関係を築く社会の実現に貢献したいと考えています。